02.18
2025年 第1回定例会 本会議・一般質問 2025/2/14 いさ哲郎1.防災対策について(7問)
最初に防災対策について伺います。1月28日、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没が発生し大きく報道されました。この道路陥没の原因は下水道の破損です。 陥没した穴にはトラックが落下し、運転席部分が下水管の下流200mのところで発見されたとの報道がありました。
今も運転手は見つかっていませんが、捜索を断念したとの報道がありました。
中野区の下水道については東京都下水道局の所管です。区内の下水道の安全確認や更新について確認したところ、安全確認は適宜おこなっており、更新については①国道や腐食のおそれが確認できている区間については5年ごと、②都道については10年ごと③それ以外は30年ごとの更新だとのことです。
道路の陥没という点では、下水道の破損以外の原因も考えられるかと思います。区道の更新については過去の質疑において、50年で区内を一周する計画であることを確認しています。では、道路の下に空洞ができていないかなど区道の安全確認についてはどのように行っているでしょうか。伺います。
(Q1)
事故の当該箇所は法定点検では「早急な対応が必要ない」との評価で、耐用年数の50年を迎えていなかったとのことです。中野区においても、東京都下水道局と協議し、点検や更新の頻度について見直しの検討をすることを要望します。
次に、避難所の改善について伺います。
昨年12月、政府は避難所の運営指針を改定しました。この改定にあたっては、国際基準である「スフィア基準」を取り入れています。スフィア基準とは、「人道憲章と人道対応に関する国際的な最低基準」の通称です。非常時であっても、被災者には尊厳ある生活を営む権利があり、支援を受ける権利があるということ、そのためにあらゆる手段が尽くされなくてはならないことが示されています。このスフィア基準について区の認識を伺います。(Q2)
改定された指針では、トイレは災害発生当初は50人に1基、その後は20人に1基を配備、男女比を1:3とするよう推奨されています。また入浴施設については50人に一つとの基準が示されました。一人当たりの居住スペースについては最低3.5平米と明示し、簡易ベッドと間仕切りは最初に避難所が開設された時からの設置としています。また、被災者に温かい食事を提供する必要性なども強調された内容となっています。
この度の避難所運営指針の改定を受け、現在の中野区地域防災計画で示された基準は見直し・改定が必要になってくるのではないでしょうか。伺います。(Q3)
次に、地域の防災について伺います。本町5丁目から6丁目にかけて東西におよそ1kmに渡り急傾斜地が存在します。この崖地の安全対策をこれまで何度か質疑してきました。2017年に東京都の土砂災害警戒地域の指定が更新されたものの、指定された箇所以外にも危険な場所があるのではないか、という指摘も行ってきました。
この土砂災害警戒地域に指定された場所の一つが本町五丁目にある都営住宅の裏手の崖地です。この場所は2023年4月4日に崖崩れを起こし、工事中の重機が崖下に転落、重機の運転者が怪我をする事故が発生しています。この事故により、崖地の擁壁は今でも崩れたままになっており、崖下の都営住宅の自転車駐輪場は一部が使えない状況です。
この事故において区はどんな対応をしたのでしょうか、最初に伺います。(Q4)
その崖地は、土地の所有者が変わり、現在は新たな建築物の計画が記されています。この建築の安全性について区はどのように確認するのでしょうか。建築確認申請の書類をチェックするだけなのか、事業者に対し情報提供や指導を行うのか、伺います。(Q5)
この都営住宅の居住者からは、工事そのものに対する不安の声が聞こえています。「中野区中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」には、高さ10mを超える建築物については事前に説明会を行うこととなっていますが、近年は説明会が行われずトラブルになる事例も耳にしています。工事説明会は基本的には事業者が行うべきものであることは承知していますが、説明会開催の要望が都営の住民や近隣住民から中野区に届いた場合は、事業者に対して説明会開催の指導をすべではないでしょうか。伺います。(Q6)
前回の土砂災害警戒地域指定の更新では、この約1kmにおよぶ崖地で、該当は2か所だけでした。急傾斜地法第2条で、急傾斜地とは「斜度30°以上、高低差5m以上」と規定されており、特に高低差が該当しない部分も多くあります。しかし法的に急傾斜地に該当しない箇所であっても、擁壁の痛み・ひび割れなどが目視で確認できる場所があり、そのことも以前の質疑で指摘をしてきたところです。地元の課題については、地元自治体による見回りで安全確認をするほかないと考えます。改めて、区独自の地域の見回りの必要性について伺います。(Q7)
2.感染症対策について(7問)
感染症対策について伺います。昨年12月27日、厚生労働省はインフルエンザの感染拡大について警報を発出しました。全国に約5千ある定点医療機関における12月16日から22日の週のインフルエンザの新規感染者数は21万1049人で、定点あたり42.66人だったとのことです。前週19.06人ですので倍以上の急増です。また警報基準である定点あたり40.00人を超えるのは6年ぶりで、新型コロナウイルスの発生以降、初めてとのことでした。また、インフルエンザ以外にも、新型コロナやマイコプラズマ肺炎など、複数の感性症の流行と重なったことや、咳止めや解熱剤などの薬が不足する事態となったことも報道されています。
東京においては、12月23日からの最終週において定点あたり感染者数が56.52人と警報基準を大きく上回っていることは注目すべきことです。(下図、赤線部分)
改めて、中野区におけるこの時期のインフルエンザの感染状況について伺います。(Q1)
昨年12月からのインフルエンザ流行については現在はほとんどの都道府県で警報が解除となりましたが、新型コロナについては次の感染の波が来ているとの指摘もあります。今後の感染症拡大の未通しについてもお聞きします。(Q2)
中野区の休日・夜間診療について伺います。わが会派の武田議員が区民の方よりご相談をうけました件について簡単に紹介します。その方は、年末にお子さんが熱を出し、その日空いている休日診療医を探したけれど1件しかなかった、午後に診察を受けにいったけれど受診できるまで7時間半も待たされ、受診できたのは22時半を回っていた、とのことです。インフルエンザ流行のピークの時期であり、待合室には同じような症状の患者さんがあふれていて不安だったともお話しされています。
区はこうした事態についてどのように受け止めていますか。(Q3)
中野区では医師会を通じて休日の診療について協力いただいているところですが、この休日診療については医師会からはどのようなご意見・ご要望をいただいているでしょうか。伺います。(Q4)
年末年始のような休みが多くなる期間を支える医療の体制づくりは喫緊の課題です。三重県松阪市では、休日夜間診療における小児科医の不足に対し、公募をしています。この公募には10件以上の問い合わせがあり、2025年度分の診療分35日を賄える見通しがたったとのことです。中野区でも、現状の休日の診療体制を維持するために、協力いただける医師を公募することは検討できないでしょうか。(Q5)
中野区での休日診療は「輪番制」で、当番の医療機関が順繰りに交代する仕組みです。23区の他の自治体を見てみると、決まった場所に「休日急患診療所」を設置する北区のような自治体や、練馬区・杉並区・豊島区などのように休日急患診療所と輪番制を併用しているところもあります。いずれも、区庁舎や保健医療センターなど公的施設内に休日急患診療所を設置しています。
中野区でも、固定的な休日急患診療所について設置の検討はできないでしょうか。(Q6)
このインフルエンザ感染拡大の状況で、区内の医療機関に努める医療従事者からは様々な声が届いています。インフルエンザと新型コロナなどの複合感染で高度な感染症対策を求められた、薬剤の入手が困難であった、インフルエンザと新型コロナを同時に検査できる高原検査キットも不足していた、病棟でインフルエンザ感染のクラスターが発生し対応に苦慮したなど、いずれも深刻な内容です。元々政府や行政による支援が足りていないことも以前から指摘されており、非常に厳しい運営を強いられているのではないかと懸念しています。
地域の医療体制を守るため、広く区内医療機関に対して聞き取りをするなど状況確認に努めながら、区でできる対応の検討が必要ではないでしょうか。伺います。(Q7)
感染症予防にはワクチンの接種が有効です。また、感染を防ぐための基本的な備えは手洗いうがいとともにマスクの着用です。これらの感染症予防の基本が、新型コロナの5類化を契機に損なわれつつあることを懸念しています。先週金曜日には沖縄で百日咳の流行が始まったとの報道がされています。この先も複数の感染症の流行が続くことを前提に備える必要があります。そのためにも、感染症対策の基本に立ち返り、区民の命を守る立場で科学的で正確な周知をすることを求め次の質問にすすみます。
3.子どもや若い世代を守る取り組みについて(5問)
(1)アルバイト等で遭遇するトラブルについて
近年、手軽に登録や申し込みができるスポットワーク、通称「即日バイト」の利用が急増しています。こうした働き方は気軽である反面、労働者の権利が守られない事例が報道などで多数報告されています。また、闇バイトの入り口となっているということも指摘されています。違法な働き方、働かせ方が社会問題となっている今、労働基準法を広く周知することが求められています。
現在中野区の中学校では、社会科の時間に1日8時間週40時間労働など基本的な制度を学ぶことになっていると聞きました。大事なことですが、一般教養として制度を知っていても、いざという時に、労働者の権利としてそれを行使することができるかどうかは別の話です。
こういう時に役に立つのが、東京都労働局が作成しているポケット労働法です。
ポケット労働法には、労基法など働く上で関わる法律が網羅されていて、後段には「働く人たちのための窓口」という相談先の一覧もあります。中野区では産業振興センターに設置されていますが、台東区のように毎年継続的に新成人に配布している自治体もあります。中野区でも、新成人に対して配布を検討すべきではないでしょうか。(Q1)また、高校生からアルバイトをする子もいます。中学三年生には、東京都労働局のサイトに掲載されているポケット労働法のデータのリンクを知らせ、働く上で困ったらこれを見るようにと周知することはできないでしょうか。(Q2)伺います。
中野区は、闇バイトについては昨年末に警察作成の周知のビラを中学生全学年に配布したそうです。緊急性が高いことから大事な取り組みですが、警察は刑法の違反は取り締まることはできても、労働法での違法行為は取り締まることができません。その権限をもっているのは労働基準監督局です。労働問題の解決には労基署や労働委員会などの専門分野の助けが必要です。大人になってもこうした知識は役に立ちます。ぜひ前向きな答弁をお願いします。
(2)性教育の充実について
次に性教育の充実について伺います。これまで会派として性教育のさらなる推進やリプロダクティブ・ヘルス/ライツの普及啓発について求めてきたところですが、2024年3月改定の中野区男女共同参画基本計画(第5次)に、「性に関する正しい知識の提供やリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する理解の普及・啓発のための取組について検討し、実施します」との記載がされたことは重要だと考えます。
中野区での性教育は、中学校においては東京都の実施するモデル校事業を年間1校で実施しています。モデル校以外では年間2コマ程度は性教育に充てているとのことです。いずれも大事な取り組みではありますが、すべての生徒に性教育を行き届かせるためにはさらなる努力が必要ではないでしょうか。ネットにあふれる誤った性の情報、世界の中でも後れをとっているジェンダー平等、性的少数者への理解など、現実にそこにある課題を解決するには、性教育とリプロダクティブ・ヘルス/ライツの教育を質・量とも増進させていく必要があります。すべての中学校で、モデル校と同等の性教育を行うことを検討すべきではないでしょうか。伺います。(Q3)
学校の先生が多忙であることは重々承知しています。教える内容が年々幅広くなっていく一方で教師不足という状況です。性教育をさらに推進していくためにも、性教育の実施そのものや、保育や教育の現場で性暴力の事案が発生するような場合の対応について、先生個人に任せきりにしない仕組みが必要ではないでしょうか。岐阜県可児市では、子育て支援課という部署に、臨床心理士や助産師を性教育の専任者を配置して、保育園・幼稚園・小学校・中学校で性教育の実施をしています。また小学校には性教育の巡回授業を行い、中学校では性に関する講演会を開催しています。保護者に対しても、家庭での性教育について各成長段階でそれぞれ講座を開催し、広く性教育を行き渡らせる努力をしています。専門職なので、性暴力の事案が発生した場合でも、保育士や教師が対応について頼ることができます。中野区でも性教育の専任者の配置を検討できないでしょうか。伺います。(Q4)
性教育を質疑で取り上げるにあたり、これまでも何度も「寝た子を起こすな」という言葉に出会っています。性教育という言葉を、あたかも性行為の方法を教えるかのような誤解をされている方もおり、余計なことをするな、というのがこの「寝た子を起こすな」の意味です。
包括的性教育とは当然そうしたものではありません。科学に基づく体の仕組みや避妊中絶の方法、多様なセクシャリティや文化的社会的な規範や価値観とジェンダー、国際人権や性と生殖に関わる制度、人間関係のあり方など、性の問題にかかわる広範な内容を文字通り包括的に身につけることを目指しています。何より、そうした系統的な性教育の結果、子どもたちは性の問題を命や尊厳にかかわる問題として理解し、むしろ性行為に対して慎重になるという複数の研究があります。つまり性教育とは「寝た子を起こす」ことではなく、子どもたちを守ることそのものです。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの教育では、自分の体を通して自己肯定感を高め、自分の尊厳も他者の尊厳も大事だと実感する、こうした効果が期待できます。タブレットに閲覧制限のフィルターを設けるのも大事ですが、性被害を生まない一番の歯止めは、性教育とリプロダクティブ・ヘルス/ライツを浸透させることにかかっているのではないでしょうか。改めてこの点について認識を伺います。(Q5)
4.学校図書館について(2問)
学校図書館について伺います。一般的な図書館と学校図書館とでは根拠となる法律も違いますが、施設として一番の違いは、学校図書館が教育施設であるということ、児童生徒の健全な育成を目的としているところにあります。
区は、学校図書館とはどのような施設であるべきと認識しているでしょうか。伺います。(Q1)
学校図書館指導員についてお聞きします。学校図書館において学校図書館指導員が果たす役割は小さくありません。指導員が常駐することにより学校図書館の開館時間を長くとることができます。図書の整理や企画図書のコーナー設置など、生徒が書籍に関心を持つ取り組みも行っています。
この学校図書館指導員については2024年から委託化しています。委託にあたり一般競争入札を行ったと聞きました。この入札の条件にも、入札後の委託先への仕様書にも「児童・生徒の見守り」という項目があります。区は、これを「生徒の安全を見守ること」と定義しているとのことですが、この「見守り」という部分についてもう少し積極性を持たせることはできないでしょうか。学校図書館法4条の4には「図書館資料の利用その他学校図書館の利用に関し、児童又は生徒に対し指導を行うこと」とあります。これは図書館指導員にも当てはまるのではないでしょうか。
具体的には、図書館に来た生徒とコミュニケーションを取ること。本を選び読む楽しさ、図書館そのものを楽しい場所にするという点で、更なる役割を果たしてもらうことです。そのために、現在の委託事業者に対し学校図書館法に基づく業務の改善提案をすることはできないでしょうか。(Q2)
学校図書館の教育的な目的に鑑み、本来は学校図書館指導員は委託でなく直接雇用が望ましいと考えます。次回契約更新にあたっては、直接雇用も選択肢に入れながら検討することを求めます。
5.文化芸術施策の推進について(1問)
この間の区民委員会において、アーティストバンクの創設が報告されています。区の文化芸術振興の上で大事な事業になっていくと考え、評価をします。
アーティストバンクとは、その自治体に居住する様々な表現者をリスト化し、区民がイベントなどで活用する仕組みです。催しでピアノの伴奏をしてほしいとか、町会のにぎやかしでDJやお笑い芸人に来て欲しいとか、地元の役に立ちたいという表現者と、そうした表現者を必要としている区民や区内団体とのマッチングをするのがアーティストバンクの仕組みです。
他の自治体で先行するアーティストバンクの仕組みでは、表現者の側から登録する制度となっています。多くの自治体でプロとアマチュア両方を登録できるようになっていて、地域に住まい、地域貢献をしたいという表現者が参加しやすい仕組みとなっています。
画像は、左がアーティストバンク板橋、登録アーティストは442名、右がアーティストバンク新宿で登録は202名です。新宿は写真がありませんが、右のように写真があった方がインパクトがあるように思います。
中野区の場合は、当面の方向性として、区のイベントなどでかかわった表現者に限定し登録してもらう、という方法を検討していると伺いました。事業のスタートとしてはそうした方法をとるとして、以後の事業展開においては、表現者を広く登録できる仕組みを目指してもいいのではないでしょうか。伺います。(Q1)
実際に、これまでも町会のお祭りや区民の自主的なイベントにおいても、DJやバンド、司会者やマジシャンなど様々なスキルを持った表現者が登場しています。これは、地域にそうした表現者のニーズが既に存在していることを意味します。アーティストバンクには、そうしたニーズをさらに掘り起こし、同時に区内で活動する様々な表現者を可視化する役割があると考えます。多様性のまち中野区に相応しい前向きな答弁を求め、質疑を終了します。