06.28
2022年 第2回定例会 本会議・一般質問 2022/6/24 長沢和彦 2022年第2回定例会あたり日本共産党議員団を代表して一般質問をおこないます。
酒井区長の2期目の当選にあたりお祝い申し上げます。4年前に図られた区政転換のもとで、区民に寄り添う施策展開と公約の実現に取り組んできたことが一定評価された結果であったと認識しています。同時に、基本構想と基本計画で謳われた政策の実現は、これからが本番とも言えます。区民の期待もそこにあるのだと思います。公約実現に向けては、区民への説明責任を果たし、慢心することなく引き続き区民参加と職員のボトムアップを大切にした区政運営をすすめていただくことを期待します。
我会派としても、チェック&バランスという議会の機能を働かせつつ、区民要求実現と区政の民主的発展に力を入れてまいります。
1.区長の政治姿勢と区政運営について
(1)区長公約について
〇日本経済は20年ぶりの円安に襲われています。輸入物価が高騰し、輸入に依存した食料品・日用品・ガソリンなど、生活必需品の値上がりが相次いでいます。長期的な経済停滞が続く日本は、物価高にも直撃されている状態です。物価が上がっているのに、賃金は伸びず、賃金水準はOECD平均を下回っているばかりか最低クラスです。物価高騰への対策には、賃金を引き上げる政策をとることや、消費税を5%に減税することで消費をあたため、実体経済の充実を図ることが必要です。
ここでは、物価高騰による区民生活への影響についてうかがいます。
6月7日に我が会派から「深刻な物価高騰から区民のくらしと営業を守る緊急要望書」を区長に提出しました。「区民や区内事業者の影響や実態を把握し」、区内の「医療機関、社会福祉施設、介護施設、民間の保育園・幼稚園、公衆浴場など、公益性の高い事業者に対し食材料費や光熱水費、燃料費など経費の支援」「区立小中学校に給食を提供している委託事業者に対し、食材料費の支援」を行うことなど、7項目について要望しました。その場で、区長からは「区内の事業者等への影響については把握したい」との言及があったところです。また、所信表明では「世界的な物価高騰による経済と生活への影響を見極めながら、区として必要な策を講じていきたい」と述べられました。
改めて、区民と区内事業者への影響把握と対策・支援を求めます。答弁を求めます。
区長は区長選の中で「子どもにやさしいまち、困っている人にやさしいまち、安全で活力あるまち」を公約に掲げて選挙をたたかいました。
(子どもにやさしいまちへ)
〇子育て先進区・中野の実現に向けて、「子どもにやさしいまち」をめざすことは大切です。
東京都は2023年度から、所得制限を設けた上で、現在15歳までとしている医療費の助成対象を18歳(高校3年生)まで拡大することを決めました。
区長は3月の記者会見の場で、「中野区では、16歳から18歳についても、独自に上乗せすることによって、所得制限を設けず、対象となる全世帯の医療費を2023年度中に無料化することに向けて、検討していきたい」旨を述べられたことは重要です。報道によれば、特別区長会会長は、「23区は所得制限や自己負担なしで無償化を実施する」と発表。その上で、都が助成開始から3年間は23区側の費用を都が負担する提案を暫定的に受け入れることを決定し、23区は上乗せ分だけ負担すると報じられています。
東京都が18歳医療費助成に踏み出すこと、期限付きではありますが一部費用負担を行うことは歓迎しますが、この機会をとらえて東京都が通院費の自己負担分や所得制限についても撤廃するよう特別区として働きかけるべきではないですか。区長の見解をうかがいます。
「困っている人にやさしいまち」については、この後の介護保険と高齢者施策についての項でお聞きします。
(安全で活力あるまちへ)
〇「安全で活力あるまち」についてです。ここでは文化・芸術に関わってお聞きします。区長は所信表明で、中野駅周辺での各地区の整備事業、再開発事業との関連で「今後、文化・芸術の象徴的な場所となるのは、現中野サンプラザのDNAを継承した、中野駅新北口駅前エリアに整備するシンボルタワーや多目的ホールです。音楽、サブカルチャー、スポーツ、地域の文化の4分野を中心として、新たな文化・芸術の発信
拠点に(する)」と述べられました。多目的ホールが音楽やスポーツに供することは想
定できますが、シンボルタワーでの文化・芸術に関わることとは何を指しているのでしょうか。現在示された「計画概要」でも「情報発信の場となる『文化の交差点』と位置付け…サイネージやスタジオ等を活用し、…文化を集積・発信」と記されています。ここではサブカルチャーの集積・発信を想定しているのでしょうか。
「新たな文化・芸術の発信拠点」とは、ここ新北口駅前エリアを中心とした総体としての位置付けであるとは思いますが、より具体的には、どこで何を新たな文化・芸術として捉えて、この地で展開されようとしているのか。うかがいます。
〇地域の文化について触れているのであれば、例えば、演じ手と観客という形での文化・芸術の推進だけでなく、区民が演じ発表できる場が、この新北口駅前エリア内においてつくられても良いのではないでしょうか。また、南口の中野ゼロ西館だけでなく、北口もギャラリーなど美術・芸術に触れられる場があっても良いとも思います。
事業者による公共貢献として誘致し整備することを検討してはいかがですか。見解をうかがいます。
〇財政運営について、お聞きします。
区長は所信表明で「どのような状況においても、区民サービスを向上させていくことができるよう、新たな財政運営を確立したい」と言い、これまでの「基準となる一般財源規模」の長所・短所に触れながら、「財政状況の捉え方や予算編成手法、基金の積み立ての考え方などを見直し、新たな財政運営方法を確立してまい(る)」と述べられました。
「基準となる一般財源規模」については、実際の歳入歳出とに乖離がみられ、年々、財政規模が大きくなることで、この考え方を基本に予算編成を行うことは難しくなっていると思います。
「基金の積み立て」については、減価償却費相当額の25%を基金に積立てることを構造改革実行プログラムで示しています。ただ、区有施設整備計画で施設数や配置などはほぼ決めてきたものの、学校施設以外の施設については、施設改修等の計画がないため、どのくらいの改修経費がかかるのかは明らかにされていません。今後、目安となる金額は極力、示していくことを求めておきます。
ここでは、基金積立のあり方について質問します。
財政調整基金の積立については、前年度の決算剰余金の一部を毎年度、第3回定例会の時期に積み立てています。実質収支を3%~5%の範囲でとらえれば、想定できる一定額を積んでいくことは可能であると考えます。
他方、特定目的基金の積立は、仮に財政が下振れや規模が縮小した場合においても年度当初から一定額を積立てることになると、予算編成の上で、区民サービスの後退を招かないか懸念されるところです。区民サービスを後退させず、歳入での財政調整基金の繰入はもちろん、歳出での年度当初からの特定目的基金の積立については、柔軟な対応が求められるのではないでしょうか。年度末に生じる減額補正などの機会を捉えて、特定目的基金への積立については、柔軟な積立の計画とすることは可能であると考えます。見解をうかがいます。
〇公契約条例の施行にあたっても、お聞きします
先の第1回定例会において、中野区公契約条例が制定されました。8月に条例第13条に則り、中野区公契約審議会が設置されることになります。この審議会で、区長の諮問に応じ、労働報酬下限額について調査審議し、答申することとしています。
公契約条例第6条の適用範囲にかかわってうかがいます。
第6条第1項第2号「工事又は製造以外の請負契約及び業務委託契約のうち、その予定価格が1千万円以上のもので規則で定めるもの」とあります。
以前、我が会派の質問で、生活保護の高齢者居宅介護支援事業について、事業者への委託契約額と、その事業者の事業報告書の人件費において乖離がみられ、ワーキングプアの可能性について指摘をしました。公契約においてこのような事象や疑義が生じないことを期待するものです。
条文では、1千万円以上を与条件とし、且つ、「規則で定める」としていますが、委託契約の種類はどのようなものを予定しているのでしょうか。
また、2021年度の実績でいえば、その委託契約の種類は何種類あったのか。うかがいます。
〇同じく第6条第1項第3号、指定管理協定については、原則としてすべての指定管理者による施設を対象とすることにしています。区の業務の委託契約の場合、再委託は禁止されています。しかし、指定管理者の場合はそうではありません。区は指定管理者と協定を締結して、公の施設の管理・運営を任せているわけですが、ビルメンテナンスやエレベーター設備の保全などは、その指定管理者から委託されているものと理解しています。その場合、指定管理者が委託した受注関係者における労働者等については、労働報酬下限額以上の適正な支払いがされることになるのか。うかがいます。
(2)自治体DXと個人情報保護について
〇2021年デジタル改革関連法が制定され、この法制度に基づき個人情報保護法が「改正」されました。そのもとで自治体の個人情報保護条例を2023年4月施行までに改正しなければなりません。
世田谷区においては、昨年の10月に区の審議会において、「法改正に伴う条例のへの影響について」が報告、説明され、法改正により通常諮問している事項について、「改正」保護法と個人情報保護条例の扱いを対比表の形で提示しました。その上で、「示される予定の国のガイドライン等の内容を精査した上で区の方針を立て、その後、審議会から意見を聴き適正に進める必要がある」として、今年2月に審議会へ諮問したと聞いています。
中野区においては、自治体DX推進に関する報告はあるものの、「改正」保護法に伴う個人情報保護条例改正に係る報告はされていません。どのようなスケジュールで検討していくことになるのか。議会に対しては、情報の共有や議論する機会をいかに保障していくのか。また、条例改正にあたっては、個人情報審議会への諮問・答申は考えていないのか。うかがいます。
〇「改正」個人情報保護法では、これまで各自治体の条例等に委ねてきたルールを原則全国統一のルールに変えるというものです。各自治体の自主的・主体的な行政運営に国が縛りを課して、データ利活用のために自治体の個人情報保護の規律を緩和しようとしています。
デジタル化の大前提は、政治と行政の透明性と説明責任が確保されていることです。とりわけ、機微に触れる個人情報を適切に管理し、住民に安心と安全性を保障するものでなければなりません。個人のプライバシーは基本的人権であり、改めて個人情報を保護し、自己情報コントロール権を保障する制度を整備し、住民の命とくらしを守ることに貢献するデジタル技術の活用が求められます。
仮に利活用のための全国共通のルールの策定という立法事実があるとしても、法令の規定の意図する目的と効果を「特に」阻害しない条例の規律を定めることは可能ではないでしょうか。例えば、本人から情報を収集する規定については、「改正」個人情報保護法で、それを禁止する規定はありません。自己情報コントロール権の保障、そして区民の信頼を得た事務処理の観点から「原則」を条例に明記しておくことは法律違反とは言えないと思われます。また、要配慮個人情報の取得制限規定についても、条例で記しておくことも目的と効果を阻害しないのではないでしょうか。個人情報の収集を制限する規定は、自治体内部に関する管理のルールの問題であって、全国共通ルールが問題になるものではないと考えます。見解をうかがいます。
〇デジタル社会形成基本法では国と自治体の「情報システムの共同化・集約の推進」を掲げ、「地方公共団体情報システム標準化法」では、自治体に対し、国の基準に適合したシステムの利用を義務付けています。国会では法案審査の際にシステムの共同化・集約が「自治体の政策判断を制約するものではない」と担当大臣が答弁し、自治体独自の施策が対応可能であるかのように述べました。しかし、現に、複数自治体が共同でシステムを利用する自治体クラウドにおいて、カスタマイズを認めず、自治体独自の施策が阻まれている例があります。自治体クラウドでは、カスタマイズを抑えた自治体には助成金を出す仕組みまで作って、ノンカスタマイズを推進。自治体独自の施策が抑制されています。国と自治体のあり方を大きく変え、地方自治の多様性をなくし、自治体の自立性を失わせる恐れがあります。地方自治体の本旨を侵害するものではないでしょうか。
そこでうかがいますが、個人情報保護については、中野区の政策判断は維持され、多様性や自立性が損なうことにはならないと言えるのか。区の見解をうかがいます。
(3)その他
〇1点、会計年度任用職員にかかわって、うかがいます。
第1回定例会で職員の不妊治療のための休暇の新設がなされました。
先日、中野区職労のニュースを目にする機会がありました。そこでは、不妊治療による休暇は、会計年度任用職員には及ばない、つまり、「有給」とはならないことが記されていました。
区当局と区職労の協議の中では、会計年度任用職員の給与の取り扱いについては、常勤職員等については「有給」であるのに、会計年度任用職員を一律に勤務時間数の多少にかかわらず、「無給」とするのは合理的な理由がないこと、勤務時間や日数が一定時間以上の職員は国も「有給」としており、他区においても同様の方向であることが組合側から示されています。会計年度任用職員についての有給取得の求めに対して、この扱いについては「引き続き協議すること」となったようです。
不妊治療のための休暇については、会計年度任用職員の給与の取り扱いを「有給」とすべきであると考えますが、区の見解をうかがいます。
2.保育行政について
〇保育施設の整備・誘致により待機児童数がこの4月にゼロとなったことは評価いたします。同時に、依然として特定の地域で生じている待機児童の解消には、引き続き取り組みを行うことを求めておきます。
定員割れの状況と支援を求め、お聞きします。2022年4月時点の認可保育所の0歳児の入所率は、82.2%だとうかがっています。0歳児の定員に満たない認可保育所が複数あることがうかがえます。0歳児の保育士の配置基準は子ども3人に対して1人で、事業者は雇用している保育士の賃金を保障しなければならず、厳しい状況にあると思われます。
定員に満たない私立の認可保育所に対して、子どもの年齢や期間を限定してでも、補助を検討すべきではないですか。うかがいます。
〇小学校は35人学級になりますが、保育所の4・5歳児の配置基準は70年以上変わっていません。国は、新制度になってから、1歳児を5:1、4・5歳児は25:1に改善する必要性を認めていますが進んでいません。3歳児配置改善(15:1)や主任保育士専任などの加算はあるものの、保育士配置の基準には手が付けられていません。このことが保育実践と保育士等の労働環境を厳しくしています。
区として、職員配置基準の引き上げによる改善を国に求めるべきではないですか。
また、「保育の質」をいかに確保するかは大きな課題であり、そのためにも、職員の配置基準の改善は欠かせません。根本的には国の制度改正を待つところですが、区による支援を含め充実を図っていただきたいと考えますが、区の見解をうかがいます。
〇区内では、私立の認可保育所が圧倒的に多数となっています。
各保育園において保育理念や保育カリキュラムに違いがあることは問題ないと思います。しかし、人員体制やスキルの差は放置できない課題だと考えます。
研修への支援や年度途中からの障害児や気になる子どもの受入れのための補助金など、現在も区として独自の支援を実施しているところです。しかし、例えば研修への支援はあっても、対象となる保育士等が「その日に現場を離れられない」であるとか、保育士の募集をかけても応じる人がいないなど、根本的に保育士不足が深刻です。改めて課題を抽出することが必要ではないでしょうか。
今年度において中野区保育の質ガイドラインの改定が予定されていると聞きます。
中野区の保育の質の向上をめざすとりくみとして、その実効性を担保するためには、子どもをめぐる状況とともに、保育現場の実態の聞き取りは必須であると考えます。
ガイドラインの改定にあたっては、保育をはじめ関係者を交えての検討は、どのようなスケジュールと構成にて進めようとしているのか。また、どのような内容によって充実を図るのか。うかがいます。
〇この項の最後に、保育士の処遇改善についてうかがいます。
昨年度末に補正予算にて対応した保育士処遇改善については、国からの支給額に加え、練馬区では、国の処遇改善事業の対象から外れる施設や、認可保育所の看護師など専門職、加配保育士など国補助の対象外の職員に対して支援を行うことを決めています。中野区においても区が独自の上乗せ支援を行うべきであったと考えます。
今般の保育士処遇改善事業は9月までとされ、10月以降は公定価格により処遇改善を行うことになると聞いています。現行制度で考えれば、人事院勧告によって年度途中に国家公務員給与が減額されると、その年の公定価格が4月に遡って減額される仕組みになっています。事業者からみれば、これではとても怖くて賃金引き上げに踏み切れないと思います。人事勧告を基準としている公定価格において、国はいかにして増額を図ろうとしているのでしょうか。また、この際、公定価格における費目ごとの金額を明記し、人件費を確保するための規制を強化することが必要ではないですか。区の見解をうかがいます。
3.介護保険と高齢者施策について
(制度の抜本改正について)
〇昨年の4定でも質問しましたが、高齢者が増え介護サービス利用の増加傾向が続くもとで、介護保険制度の存続が危ぶまれています。保険料は、介護保険が始まった2000年から現在の「第8期計画」に至るまで、中野区においても「第1期計画」の保険料基準額、年額36,300円から、現在の「第8期計画」では68,700円と1.89倍に増えています。第1号被保険者である65歳以上の高齢者の多くは、現在、年金収入が減り、医療費等の負担も増えています。
介護サービスを提供する事業者はどうか。介護に携わる人材確保でどの事業者も頭を悩ませています。打開策は介護報酬の大幅な引き上げです。一方、保険料や介護サービス利用者の負担増に連動するため、必要な介護サービスを受けることを遠ざけている実態があります。
しかし現在、国で検討されている内容は、給付抑制策として要介護1・2の訪問・通所介護の地域支援事業への移行、利用者負担を原則2割に。ケアプラン作成の有料化など。国が公的責任を果たさず、自治体と介護サービス利用者及び家族に負担を押し付けています。これでは介護保険に対する国民の信頼を失うことになりかねません。持続可能な制度とするならば、抜本的な見直しが必要であり、そのために国庫負担の引き上げは避けられません。あらゆる機会を通じて国に求めるべきではないですか。
うかがいます。
(ケアマネをはじめ介護サービス事業者への情報提供のあり方について)
〇介護保険の制度は発足以来めまぐるしく変わってきています。そのたびに自治体も事業者も学び直すことになります。国から自治体に示された改変の内容を事業者、とくにケアマネにきちんと説明をしていくことが欠かせません。中野区では数年前まで制度改正や介護報酬が変更となった時だけに限らず、毎年、ケアマネ等を集めて説明会を開催していたと聞きます。コロナ禍で開催ができず、オンライン開催に変更した場合もあった値は思いますが、「わからないことがあれば聞いて」という姿勢でなく、関係者を集めての開催や、その場での質疑応答を基本とすることが大切ではないでしょうか。うかがいます。
(介護と福祉の組み合わせ)
〇紙おむつサービスの対象拡大を求め、うかがいます。
紙おむつサービスは2021年度より介護保険の特別給付事業となりました。要介護1以上で常時失禁状態の65歳以上の方や身体障害者手帳1・2級または愛の手帳1・2度で常時失禁状態の方に月1回、紙おむつを配達するサービスです。
介護保険では、40歳から65歳未満の第2号被保険者のうち、加齢が原因とされる特定の16疾病(特定疾病)により介護を要する状態になり、要介護認定を受けた方は介護サービスを受けられます。例えば、50歳代の末期がん患者の方。要介護1以上で常時失禁状態のためおむつが必要です。しかし、区では、紙おむつサービスは65歳以上が対象のため受けられません。障害者手帳は所持しておらず、その対象でもありません。中野区の第2号被保険者で、特定疾病による介護サービスを受けている方は2021年3月時点で235人。要介護1以上の方は152人います。要件として所得制限は設けられていますが、紙おむつサービスを受けたくても受けられない区民は相当数いるのではないでしょうか。
板橋区では対象を40歳以上としています。中野区においても40歳以上の第2号被保険者を対象とするなど要件緩和が必要ではないですか。実施検討を求めます。
〇区では、2006年度より要介護4・5の在宅で寝たきりの方などに寝具乾燥サービスを特別給付として実施しています。実績は、利用延べ人数として、2019年度79件、2020年度49件、2021年度も49件と、延べ件数でみても多くありません。要介護度別の居宅サービス利用者数は2021年3月末で、要介護4の方は948人。要介護5の方は642人。分母に比して寝具乾燥サービスの利用が少ないのは、要介護が重度の方は、介護ベッドを利用しているため頻回利用は多くないとも考えられます。
他方、要介護1~3の高齢者や家族、及びケアマネジャーなど事業者からは、「頻繁に布団の水洗いと乾燥消毒が必要」との声が聞かれます。軽・中度の方の中には、介護ベッドを利用していない、利用できない方もいます。認知症など頻回に失禁されることで布団を汚してしまう方も少なくないと聞きます。
杉並区では、寝たきりに限らず、「寝具を干すことが困難な方」も対象としています。要件を緩和して対象の拡大を図ることを検討すべきではないですか。うかがいます。
〇短期入所(ショートスティ)に伴う送迎費用の支給にかかわってもうかがいます。
こちらも特別給付事業として、ショートスティ利用時の送迎の際にタクシー及び寝台車を利用しなければならない場合、支払った送迎費用のうち、利用者負担の限度額を超える額を給付するというものです。
介護保険施行当初は、区内のショートスティの数が少なく区外での利用が大半であったと思われます。現在は、ここ5年間の利用実績をみても、利用延べ件数で6件から13件とたいへん少ない状況です。要介護の方や家族にとって移送サービスは欠かせないものです。ただ、福祉サービスとして実施することも可能ではあります。
紙おむつ、寝具乾燥、ショートスティへの送迎サービスと、特別給付事業について質してきましたが、介護保険制度発足当初から特別給付事業として実施してきたサービスや、もともとは高齢者福祉サービスとして実施してきたのを特別給付事業に移行してきたサービスもあります。何を基準にそのように変更してきたのか。うかがいます。
○配食サービスについてもうかがいます。
区は、2010年度に、委託で行っていた配食サービスを廃止しました。理由としては、民間のサービスが増えて供給体制があるとのことでした。
現在、配食サービスの提供は民間業者により充足しているようでもありますが、ひとり暮らし高齢者が生活していく上で課題も散見されます。
ケアマネジャーからは、ひとり暮らし高齢者の食生活の実情を聞く機会がありました。介護保険で生活援助のヘルパーの時間が短縮され、調理提供は難しいと聞きます。現在、区では、民間業者による配達の際に、声掛けと見守りを行っていると聞いています。しかし、費用負担が重く「1日3食をとらない」「小分けにして食す」など、回数を減らしてしのぐなど、生活の厳しさがうかがえます。そのことで見守りの機会を失ってもならないと思います。社会的にも高齢者の栄養失調が取り上げられ、フレイルへの視点からも支援が必要であると考えます。
配食サービスを1食だけでも区として補助することを検討してはいかがですか。うかがいます。
4.包括的性教育について
〇包括的性教育とは、国際的に広く認知・推進されている「性に関する知識やスキルだけでなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶ」ための重要な概念と言われています。包括的性教育については、ユネスコが中心となって作成された「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」が公表されており、国際的な標準的指針として利用されています。
①人間関係 ②価値観、人権、文化 セクシュアリティ ③ジェンダーの理解 ④暴力と安全確保 ⑤健康と幸福 ⑥人間の体と発達 ⑦セクシュアリティと性的行動 ⑧性と生殖に関する健康 と主なコンセプトとして8個が掲げられ、その中にトピックが記され、このキーコンセプトとその中のトピックを繰り返し学び続けていくというのが、ユネスコが定義している包括的性教育と言われています。
この包括的性教育は、1つ目に、乳幼児期から思春期、青年期、さらに成人期、高齢期まで、人生における様々な課題に向き合っているすべての人にとって学ぶ意義があること。2つ目に、性的発達と人生の歩みにおけるあらゆる局面に、賢明な選択と対応ができ、自らと他者の尊厳を大切にできる知識・態度・スキルを育むこと。3つ目は、人間関係において様々な共生能力を獲得し、喜びを共有できる能力を獲得していくことが柱となっています。
教育委員会にお聞きします。
学校での性教育についての課題は何だと考えますか。うかがいます。
〇東京都教育委員会は、2018年8月に、都内の全公立中学校等624校に「性教育の実施状況調査」を行い、その結果を9月に発表しました。校長名で回答がされています。「学習指導要領に示されていない内容を指導することも必要だと思う」という項目に対し、4%が「とてもそう思う」42%が「そう思う」と回答しており、46%となっていました。また、「生徒は性に関する正しい知識を身に付けている」かについては、約半数が「身に付けているとは思わない」とする現状が明らかになりました。現在、「中学生にも性交、避妊、人工妊娠中絶、性感染症、性暴力等、大切なことをしっかり教えるべき」と言う声は増えています。こうした声に応えて、子どもたちや青年たちに包括的性教育を学ぶ権利を保障していくことが重要だと考えます。
性教育の実践を国際的スタンダードに準拠して作りあげていくことが必要になっているのではないでしょうか。教育委員会の見解をうかがいます。
〇2019年3月に、東京都教育委員会編の「性教育の手引」が改訂され発行されました。「性教育の手引き」では、「学習指導要領に示された内容を全ての児童・生徒に確実に指導するとともに、性情報の氾濫等の現代的な課題を踏まえながら、保護者の理解を得て必要な指導を行っていく」など、「適切な性教育の実施に向け」改訂したことが目的とされています。改訂の主な特徴を4点にまとめ、1点目の「指導の系統性・関連性を重視」の観点からすると、例えば、「中学生に『中絶』は教えるべきではなく、高校段階の課題である」とするなど、性的発達の視点から見て、機械的に教育委員会が学校現場に指導・助言するとすれば、改訂の趣旨はいかされないと思います。中学校学習指導要領では、「学校において特に必要がある場合には、(各教科の章)以下に示していない内容を加えて指導することができる」とされています。教育課程の編成において柔軟な「内容等の取扱い」ができることが謳われています。
2点目に、「性をめぐる現代的な課題に対応」としてあげられているのは「情報化の進展に伴う課題」「妊娠・出産に伴う課題」「性感染症に関する課題」「性同一性障害等に関する正しい理解」の4項目です。しかし、提示されている「現代的な課題」は限定的であり、学識者や学校関係者からは、性的トラブルを防ぐという問題対応と道徳的な教え込みに力点が置かれているとの指摘があります。
「手引」で示されていることはあくまで事例であり、子どもたちの性的発達状況の把握と、子どもたちの質問や疑問に正面からこたえていく実践の基本姿勢が問われていると考えます。子どもたちの性的発達を保障することが基本的な獲得目標です。
包括的性教育に真剣に向き合うべきではないでしょうか。教育委員会の見解をうかがいます。
5.コミュニティタクシーについて
〇コミュニティタクシーについてうかがいます。この間、住民の参加を得ながら検討を重ね、秋頃からの実証実験を目指していると聞いています。実証実験を行う上では課題があることもわかってきたともうかがっています。
はじめに、現在の検討状況についてお聞きします。
〇今後、関係機関との調整や、ルート周辺の住民と利用者の声を聞いて調整を図ることも出てくると思います。実証実験を実施していくなかで、さらに課題が見つかり新たな策を講じることも出てくると思われます。
実証実験の実施時には、駅までのアクセス、病院、公共施設、買い物など何を目的とした利用なのかをしっかりと把握してほしいと思います。
また、交通不便地域解消の一環として、若宮・大和町地域を走らせることにしているため、地域住民の意見は大切です。ルートや運賃の額によって、利用しにくい事態は避けることが必要です。そのことも実証実験にて利用者の意見として把握してほしいと思います。
そのためにも実証実験の実施前には、住民への周知徹底を図って多くの方々に利用してもらうよう努めることが必要だと考えます。区の見解をうかがいます。